「マーケティングプロセスとは?」
「観光業におけるマーケティングのポイントは?」
「観光マーケティングについて学びたい!」
今回は、マーケティングプロセスに則した観光マーケティングについて解説します。プロセスの各段階における観光業ならではのマーケティング手法について紹介します。
目次
そもそも、観光マーケティングとは?
「観光立国」の実現に向け動く国や自治体において、着地型観光の推進やニューツーリズム、持続可能な観光地域づくりなど、様々な事業拡大が取り組まれています。
観光マーケティングとは、上記のような動きにおいて
「住民や企業、組織・団体が、観光に関わるすべての事業において、観光客の真に求める観光行動とニーズの実現を目指し、同時に事業目的および地域利益を達成する過程」
と定義することが出来ます。
観光業や旅行業は、労働生産性の低さや団体旅行の名残からマーケティングが効率良く行われていないという課題があります。
マーケティングが地域内で行われないことで、地域が主導する観光地域づくりや観光商品の販促などの失敗要因となりえます
観光専門人材を活用する案もありますが、地域内でマーケティングノウハウを溜め、持続可能な観光マーケティングを行う必要があるでしょう。
▼関連記事:地域に焦点を当てた「コミュニティツーリズム」の重要性とは?▼
【前提】マーケティングプロセスとは?
企業や組織経営において重要なマーケティングをどのように行っていけば良いのか?日夜試行錯誤が行われています。
そのマーケティングにおいて基本となる手法「マーケティングプロセス」とは?
マーケティングプロセスとは、
企業や組織、事業創造におけるマーケティングの一連の流れを示すもの
企業活動において、マーケティングはプロモーションや宣伝戦略、一つの事業戦略と捉えられることがあります。
しかし、マーケティングは本質的には企業の経営∼商品の設計・販売、顧客満足度の向上まで、企業や組織が関わる全ビジネスを司る概念です。
マーケティングプロセスは、その一連のビジネス活動をマーケティングする過程を構造的に表した戦略・戦術モデルです。
マーケティングプロセスは、大きく6つの段階に分けられます。(上記図を参考)
- 市場分析【外部環境分析(PEST分析・3C分析)/内部環境分析(SWOT分析)】
- セグメンテーション【消費者・顧客の細分化/市場の細分化/4Rの原則】
- ターゲティング【6Rの原則】
- ポジショニング【5大要素(ターゲット・ベネフィット・メソッド・差別化・ブランド)/ポジショニングマップ】
- マーケティングミックス【4P・4C分析/KPIツリー】
- 実行と評価【KPI分析/PDCAサイクル】
1~2は戦略的マーケティングプロセス/3~6は戦術的マーケティングプロセスとして区分することが出来ます。各段階のプロセス解説は省略しますが、観光施策におけるマーケティング手法のポイントを次項で紹介します。
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観光マーケティングプロセスにおける施策ポイント
市場分析|「市場・顧客」の視点と「SWOT分析」の徹底
観光マーケティングにおいて、「市場・顧客」の視点に立った経済・社会・文化などの外部環境要因を調査することが重要です。
観光コンテンツや観光商品の醸成の際、消費者視点の少ないプロダクトアウトな商品が販売され、結果利益に繋がらないことがあります。
それは、単に「地域が推したいモノ」と「消費者に響くモノ」の差があるからです。
売りたい商品をただ製造し売るだけでは買ってもらえない時代だからこそ、常に消費者視点に立った観光マーケティングや特産品の開発を行い、「売れるモノを作る」よう取り組むことが重要です。
また、「SWOT」分析において、自社の強みや弱み、観光商品の機会や脅威などの内部的要因も調査することも必要です。
自社や地域の強みだけに焦点を当てた観光マーケティングにより、地域への悪影響(オーバーツーリズム)やリスク管理の出来ていない事業体制を及ぼす可能性があります。
観光マーケティングにおいては、自社や地域の強みを発揮する一方で、弱みや脅威などのネガティブな要素から新たな観光施策の推進および持続可能な観光地域づくりを実現することも重要です。
セグメンテーション|「カスタマイズド・マーケティング」と「行動上の変数」
観光マーケティングプロセスのセグメンテーションにおいて、消費者・顧客とのコミュニケーションに重点を当てた捉え方が重要です。
着地型観光の推進やSNSなどの普及により、企業や地域自治体が直接顧客や消費者にアクションを起こすことが容易になり、また観光客も自身で観光商品や観光地を検索・シェア出来るようになりました。
観光マーケティングにおいて、顧客のロイヤリティやコミュニケーションの充実を図るよう、消費者の行動や好み、特徴などをセグメント要素とすることは重要性を増すでしょう。
▼関連記事:観光プロモーションの手法を知りたい!どう消費者とコミュニケーションを行うか▼
ターゲティング|「3C分析」と「SWOT分析」による視点
セグメンテーションによって区分された分野をターゲティングする際、「SWOT分析」により得られた自社の強み・弱み・機会・脅威を考慮して「3C分析」を行い、ターゲットを決定することが必要です。
観光マーケティングにおけるターゲティングの際、他の地域の成功事例や多くの企業が参入する分野が必ずしも自社・地域に適した分野ではありません。
自社や地域の経営・マーケティング力、競合との位置関係、顧客との関わり合いの中から、存分に闘うことの出来る市場環境を選ぶ必要があるでしょう。
ポジショニング|「市場動向」と「差別化」の考慮
観光マーケティングのポジショニング段階において、観光市場や社会情勢などの「市場動向」と他企業との「差別化」を意識する必要があります。
ポジショニングマップを作成する際、「現在」と「未来」において重要な要素となる項目の設定、および他と比較して自社や地域特有のもの且つ消費者ニーズに則したアイデアの選定を実践することが重要です。
▼関連記事:観光マーケティングに役立つ|今後の観光トレンドは??【徹底解説】▼
マーケティングミックス|「高付加価値」を意識した観光施策
マーケティングミックスにおいて、「4P・4C」「KPIツリー作成」等は重要な施策ですが、
常に「消費者や顧客にとっての高付加価値」を意識し、各項目の策定及び選定をしなければなりません。
結局はアイデア勝負かもしれませんが、消費者や顧客のアフターサービスの充実、満足度の向上、改善のためのアンケート調査など、消費者や顧客に目を向け、着実にマーケティングを行っていくことが大切です。
実行と評価|「数字」と「PDCAサイクル」の循環
観光マーケティングプロセスの実行と評価の段階においては、特に「数字やデータ」に注意し、「PDCAサイクル」を回すことが重要です。
その際、市場動向と共に調査し、今後の事業計画およびマーケティングを行っていくことが重要です。
デジタルマーケティングやDX推進により、事業達成度やマーケティング効果が数字やデータで視認できるようになったことから、今まで見えなかったマーケティング施策の達成度と方向性を改善し、またデータによる事業達成度を明示することで市場における地域住民や顧客の理解促進も促すことが可能になるでしょう。
観光マーケティングのトレンド|今後に重要な観光地域づくりのポイント
・「持続可能な観光地域づくり」と「SDGs」
・地域コミュニティに配慮した着地型観光の推進
・「マイクロツーリズム」や「アンダーツーリズム」の拡大
・働き方改革と観光の新たな関係性の模索、DXの推進
2020年は新型コロナウィルスの拡大により国内観光客を始め国際観光の需要もゼロとなりました。「観光立国」の実現、2021年の観光ニーズの回復に向けて、どのような観光マーケティングや施策が注目されるでしょうか?
「持続可能な観光地域づくり」と「SDGs」
世界的にエコや持続可能性をテーマに数多くの環境保護活動や全環境を守る社会創りが活発になっています。
「持続可能な観光開発」「リジェネラティブ・トラベル」など、観光分野においても地域の生活文化や住民を守る持続可能な地域観光の創造が推進されています。
今後は、「観光地域」に焦点を当て、「地域住民」と「観光客」双方にとって利益があり、再生することの出来る観光マーケティングが重要になるでしょう。
▼関連記事:持続可能な観光開発とは?2021年の重要な観光マーケティング要素▼
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地域コミュニティに配慮した着地型観光の推進
着地型観光の拡大と観光客の増加により、「観光」と無縁だった地域住民や中小企業などが積極的に観光事業に関わることが重要となっています。
観光事業者や自治体は、観光マーケティングとして地域住民の理解促進を第一に考える必要があります。
今後は、「コミュニティツーリズム」の推進や地域への愛郷心を示す「シビックプライド」を醸成し、地域全体で観光マーケティングおよび観光地域づくりを行う体制創りも重要となるでしょう。
▼関連記事:地域住民をマーケティング、「シビックプライド」と観光との関係性とは?▼
「マイクロツーリズム」や「アンダーツーリズム」の拡大
コロナウィルスの影響拡大により、より一層の個人観光客の増加および地域が主導する「マイクロツーリズム」「アンダーツーリズム」の需要が増すでしょう。
団体観光客や観光客の急激な増加により「オーバーツーリズム」などの課題が先鋭化する中、少数人数、個人で観光・旅行する層を取り込むことが重要で、消費単価の高い観光客を誘致するような観光マーケティング施策も重要となるでしょう。
▼関連記事:全国の隠れた観光地域めぐり「アンダーツーリズム」とは?▼
働き方改革と観光の新たな関係性の模索、DXの推進
コロナウィルスによるリモートワークの普及、働き方改革の推進、企業や自治体のデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みなど、社会や市場動向の急激な変化が起きています。
観光分野においても、働き方改革とDXの推進により、労働生産性の向上および効率的な観光マーケティングが取り組まれています。
今後は、ICTの促進に伴う社会情勢に注意し、且つ観光事業者における更なる観光サービスの向上に努めることが重要となるでしょう。
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まとめ:観光業の甘えは、観光マーケティングの普及を妨げる
観光業や旅行業、宿泊業などは、従来のマスツーリズムの恩恵に甘えている部分があります。
個人観光客の増加やインバウンド観光客の訪日により、より消費者に視点を置いたマーケティングは重要性を増します。
企業では当たり前に行われているマーケティングを、地域の自治体・企業・住民一丸となって実践していくことは必ず必要になるでしょう。
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