【観光士が教える】アンダーツーリズムとは?|持続可能な観光の形「アンダーツーリズム」【事例】

「アンダーツーリズムとは?」

「観光客が多いと社会に影響が出るなぁ」

「持続可能な観光地開発を行いたい」

今回は、オーバーツーリズム対策や観光地域づくりにおいて注目される概念「アンダーツーリズム」について事例とともに紹介します。

以下の点を解説!

・「アンダーツーリズム」とは?⇔「オーバーツーリズム」

・持続可能な観光開発に向けて

・「アンダーツーリズム」の事例

「アンダーツーリズム」とは?

「観光立国」の実現、観光による地域創生など、全国的に地域の観光地化が盛んに行われています。様々なニューツーリズム事例や観光コンテンツが創られるなか、「アンダーツーリズム」という新たな観光があります。

「アンダーツーリズム」とは、

従来多くの人々が訪れていた観光地や観光名所でなく、あまり知られていない観光地域や地元民しか知らない穴場スポットなどのローカルエリアへ足を運ぶこと

アンダーツーリズムは、知る人ぞ知るスポットを訪れるもので観光客も少なく、落ち着いて地域を楽しむことが出来ます。また、地域住民と交流し、あまり知られていない魅力を発掘することも「アンダーツーリズム」の醍醐味と言えます。

対義語「オーバーツーリズム」

「アンダーツーリズム」の対義語に、「オーバーツーリズム」という言葉があります。

「アンダーツーリズム」という考え方が生まれた背景には、この「オーバーツーリズム」という近年の観光問題があります。

「オーバーツーリズム」とは、

ある特定の観光地に多くの人々が訪れ、観光地のゴミ問題、環境悪化、住民への悪影響など、観光客の増加によって引き起こされた観光公害のことです。

日本では京都府、世界ではパリ、バルセロナなど、それ以外にも多くの観光地で「オーバーツーリズム」は大きな問題となっています。



「アンダーツーリズム」|「オーバーツーリズム」を対策!

「アンダーツーリズム」は、観光客の増加や観光地への悪影響を及ぼす観光公害「オーバーツーリズム」の対策として誕生した新たな観光アプローチです。

観光客が訪れ、観光客自身の楽しみが半減すること、観光地の環境や社会を十分に維持できないことなど、「オーバーツーリズム」の問題に対し、

「アンダーツーリズム」は観光客の分散や落ち着いた観光を提供することで、観光客と地域双方に大きなメリットと効果を及ぼします。

持続可能な観光開発に必要なこと

・経済/社会/環境に配慮した観光開発

・アンダーツーリズムを推進する地域マネジメント

・観光公害を減らす観光人材の育成

観光公害である「オーバーツーリズム」の対策として、「アンダーツーリズム」を地域全体で推進することが必要です。

穴場スポットや知られていない地域は、観光資源はあるものの整備されておらず、いざ観光客が来ても記憶に残るような体験を提供出来ていません。地域マネジメントを行う組織や団体が、地域の知られざる魅力や観光スポットを発掘し、アンダーツーリズムの開発/プロモーションを実施する必要があります。

また、アンダーツーリズムを実施する際、地域住民との意見交換や理解の促進、経済/社会/環境に配慮したアンダーツーリズムを展開できるような観光人材の育成も急務となっています。

地域主導で観光地域づくりを行う「着地型観光」が主流となる観光動態のなかで、地域の未知の観光資源や気付かれなかったスポットを見つけ開発することは、困難な道のりである一方、とても重要なことなのです。

▼関連記事:「着地型観光」と「ニューツーリズム」とは?▼

参考:持続可能な観光開発において重要な点

「アンダーツーリズム」の事例

・京都市の「アンダーツーリズム」事例|京都市観光協会

京都市は、観光客の増加に伴うオーバーツーリズムに苦しむ都市の一つです。

オーバーツーリズムに対する対策として様々なことが掲げられるなか、隠れた名所を活用した観光客の分散するアンダーツーリズム事業が行われています。

京都市の観光情報サイトである「京都観光Navi」に、「京都朝観光・夜観光」のページを開設し、観光客の時間差による分散を行っています。また、滋賀県大津市の琵琶湖と結ぶ観光ルート開発や周辺地域との連携した観光開発、隠れた名所の情報発信を行う等、アンダーツーリズムの拡充に取り組んでいます。

参考:京都市観光協会

・愛知県佐久島の「アンダーツーリズム」事例|西尾市役所佐久島振興課

愛知県のアンダーツーリズムで注目するスポットは、癒しとアートの島「佐久島」です。

「佐久島」は、知られざる観光スポットとしてSNSで話題になり、観光客の分散効果を見込むことが出来ます。街中にアート作品や歴史が残る寺院や建物、レジャースポットとしての海水浴場や農園など、自然癒される場とアート空間がコラボする魅力溢れる観光地域です。愛知県もアンダーツーリズム事例として、「佐久島」の情報発信を行うなど、人々に知られていない観光スポットの開発に取り組んでいます。

参考:佐久島公式サイト

▼関連記事:地域をまるごと美術館に!▼

・福岡県の「アンダーツーリズム」事例|柳川商工会議所

福岡県の柳川商工会議所がアンダーツーリズムとして観光開発を行う隠れた名勝「水郷柳川」があります。

「お堀めぐり(川下り)」が有名な観光地である柳川市は、「北原白秋の市場を育んだ『水郷柳河』の景観」として国の名勝に指定されており、それら隠れた観光地の開発とプロモーションを行い、アンダーツーリズムとして観光客の分散と地域活性化に取り組んでいます。

参考:feel NIPPON

まとめ:アンダーツーリズムで地域活性化!

今回は、観光地域における「オーバーツーリズム」に対する新たな観光の形「アンダーツーリズム」について紹介しました。

隠れた名所やスポットは、地域住民の視点からは思いつかないものも多く、アンダーツーリズムとして発見・開発することは難しいかもしれませんが、地域外の第三者の視点や観光客の多様な観点を大事に、アンダーツーリズムの推進を行ってほしいと思います。