「リジェネラティブ・トラベルとは?」
「サステナブルツーリズムとの違いは?」
「リジェネラティブの取り組みは?」
株式会社やまとごころの村山慶輔代表取締役の最新著書「観光再生-サステナブルな地域をつくる28のキーワード-」でも注目される「リジェネラティブ・トラベル」について紹介します。「リジェネラティブ・トラベル」とは?そして、その取り組みについて解説します。
目次
「リジェネラティブ・トラベル(Regenerative-Travel)」とは?
世界的なエコや環境保全に対する取り組み、急激な国際観光の発展による地域への影響対策、経済活性化と貧富格差の是正、アフターコロナへ向けた新たな観光の形成など、新たな課題に直面する世界各国で、国や地域、人々を守る動きが活発になっています。
このような世界的潮流の中、「リジェネラティブ・トラベル」とは、
旅行・観光による社会的・環境的影響に対し、積極的に関与し、新しい関係性の中で模索する新しい継続的で再生可能な旅行・観光
と捉えることが出来ます。
「リジェネラティブ・トラベル」の概念は、アメリカグリーンビルディング協会が提唱する世界標準の環境評価ツール「LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)」に端を発しています。先進各国ではすでに取り組まれる再生可能エネルギー事業や廃棄物や炭素などのリサイクル促進など、多くの分野(主に環境)で活用され、「持続可能な再生」がキーワードとなっています。
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「リジェネラティブ・トラベル」の背景|「オーバーツーリズム」とSDGs
・「オーバーツーリズム」による悪影響
・「持続可能」から「再生可能」へ
・新たな関係の中で創造する「新たな観光の形」
「リジェネラティブ・トラベル」が注目されるようになった背景には、主に3つあります。
1.国際観光の発展と観光客増加による地域の「オーバーツーリズム」
国際観光の急激な発展により、特定の地域や観光地に多くの観光客が集まる「オーバーツーリズム」が問題となっています。「リジェネラティブ・トラベル」は、「オーバーツーリズム」による地域/地域住民・観光客双方にとっての悪影響を減らし、地域や観光地を再生しながら更なる活発な観光地域づくりを推進すると期待されています。
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2.「持続可能」だけでない「回復と再生、より良い明日を築く」こと
∼「リジェネティブ・トラベル」と「サステナブルツーリズム」の違い∼
アメリカのインディアナ州パデュー大学准教授Jonathon Day氏は報道紙「ニューヨークタイムズ」に、
「サステナブル・ツーリズムは現状維持。つまるところ観光地をめちゃくちゃにしないことにすぎない」ことと語っています。
引用:村山慶輔(2020). 「観光再生-サステナブルな地域をつくる28のキーワード-」 プレジデント社 p.313(電子版)
観光客増加による深刻な地域・環境への影響、地域雇用の減少や人口流出など諸課題に対し、「持続可能な開発目標」であるSDGsの実現に期待が寄せられています。
一方で、SDGsの「サステナブル」な視点は、単にスローペースな劣化対策だと見なされることもあります。
サステナブルツーリズムは、今ある資源や観光地域を持続的に維持することである一方、
↓
「リジェネラティブ・トラベル」は地域資源や観光地域を現状から回復させ、より良い姿へ再生すること
と捉えられ、「リジェネラティブ・トラベル」は今後の観光地域づくりに重要な要素となるでしょう。
3.コロナウィルス禍における新たな関係の中での「新たな観光」の模索
・客単価の高い観光客の誘致
・周遊性の向上および長期滞在の促進
・観光税や入国税の拡充
・環境や社会に配慮したコンテンツ作り
・最先端技術を活用した観光サービス etc.
2020年、国際観光は急激なコロナショックに瀕しました。しかし、東京オリンピック開催や「観光立国」実現のため、国・自治体・企業・地域が連携し、観光需要を回復させることは出来ます。一方で、以前と同じような旅行や観光が出来るのでしょうか?
「リジェネラティブ・トラベル」の取り組みは、世界的に拡大しており日本は環境保全の面等で一歩遅れています。持続するだけでなく、観光業によるお金の循環、経済活性化、観光客や地域双方にとっての利益など、更なる発展を促進するための「リジェネラティブ・トラベル」の概念は重要になってくるでしょう。
「リジェネラティブ・トラベル」の取り組み
「Future of Tourism Coalition」|「リジェネラティブ・トラベル」による「より良い未来」
持続可能な観光開発を促進する「グリーンデスティネーションズ」やCREST(Center for Responsible Travel)、STI(Sustainable Travel International)、DSC(Destination Stewardship Center)など6つのNPOが連携して結成した「Future of Tourism Coalition」は、「リジェネラティブ・トラベル」の取り組みとして、「より良い明日を築く」ことを目標に、地域のサステナビリティの促進、観光資源の保全や観光廃棄物の削減、責任ある観光事業の拡充など13の原則を策定し、多くの観光業者、ツアーオペレーターなどが署名しました。
参考:Future of Tourism Coalition
参考:村山慶輔(2020). 「観光再生-サステナブルな地域をつくる28のキーワード-」 プレジデント社