姉妹都市交流と観光の関係性|姉妹都市交流を活用した地域の観光施策とは

「姉妹都市交流とは?」

「姉妹都市交流の効果やメリットが見えない」

「姉妹都市交流を活用した観光施策は?」

今回は、自治体・地域間で行われる国際的な友好関係の印「姉妹都市交流」について解説します。あまり注目されずにある「姉妹都市交流」の地域における役割やメリット、「姉妹都市交流」を活用した観光施策および観光地域づくりについて紹介します。

以下の点を解説!

・姉妹都市交流とは?

・姉妹都市交流の役割やメリットは?

・観光業における姉妹都市交流

1955年12月に、長崎市とアメリカ合衆国セントポール市とで我が国最初の「姉妹都市提携」が締結されました。以降、2020年12月1日現在で、姉妹都市提携は1777組に達し、888の自治体が姉妹都市交流を行っています。

自治体区分姉妹提携件数姉妹提携自治体数複数姉妹提携自治体数
都道府県1694338
1,258572330
412113
27021648
39363
合計1,777888432
引用:一般財団法人自治体国際化協会(2020年12月1日)

「姉妹都市」の法律上の定義はなく、広辞苑によると

「文化交流や親善を目的として結びついた国際的な都市と都市」

と説明されています。

姉妹都市提携および姉妹都市交流を促進する「一般財団法人自治体国際化協会」は、

  1. 両首長による提携書があること
  2. 交流分野が特定のものに限られていないこと
  3. 交流するに当たって、何らかの予算措置が必要になるものと考えられることから、議会の承認を得ていること

と上記3つの基準を満たす場合に、姉妹都市や姉妹自治体として取り扱っています。

参考:一般財団法人自治体国際化協会

姉妹都市提携の締結要素

姉妹都市提携の締結理由は、主に

・自然環境や文化、歴史的観点の共通性や類似性

・国際的な組織や第三者からの紹介および推薦

・地域住民同士の草の根レベルでの国際交流

・産業振興や移転、進出を含む経済的契機

・学生同士の留学提携 etc.

を挙げることが出来ます。

「姉妹都市交流」の役割やメリット

・姉妹都市交流による国際理解や国際親善の推進

・姉妹都市交流による地域振興と地域活性化

・文化/経済/技術などに多岐に渡る国際協力

・国際理解や国際親善の推進

姉妹都市交流の意義は、グローバル化が進む時代において国際理解や国際親善の促進に大きく寄与することです。

「ヒト・モノ・カネ」がグローバルに移動する現代において、日本国内だけでなく世界に目を向け、世界の人々の生活や文化、経済などあらゆることに関心を払う必要があります。姉妹都市交流は、このような国際的な理解を促進し、世界規模での社会・文化・経済での助け合いを築くことに貢献します。

▼関連記事:「シビックプライド」と観光の関係性とは?▼

・国際交流による地域振興と地域活性化

国や自治体が主導する「多文化共生社会」の実現に向け、姉妹都市提携および姉妹都市交流が果たす役割は大いにあります。外国人労働者に対し過酷な労働環境を強制し、異民族に対しては強い反感やデモなどが引き起こることもあります。

姉妹都市交流による国際交流や海外の人々との助け合いは、人口減少が著しい国内において重要な要素であり、言語や文化、制度の壁を越えた姉妹都市交流による地域振興を実現することが出来ます。

・文化/経済/技術などに多岐に渡る国際協力

国際会議による知見の共有や福祉・教育・公共サービスの協力体制の拡充など、文化/経済/技術の多岐に渡る国際協力も、姉妹都市提携や姉妹都市交流により拡大することが期待されます。青少年の姉妹都市間の派遣や学生間交流から、自治体トップによる意見交換など、姉妹都市交流は地域の今後を担う人材開発や地域活性化を実現する重要な要素と捉えられています。

参考:姉妹都市交流の意義∼グローバル化の進展と姉妹都市∼

「姉妹都市交流」の観光における活用

「観光立国」の実現を目指す動きや地域主体での観光誘致など、観光業を主体に経済活性化が促進されています。このような中で、姉妹都市提携や姉妹都市交流を観光施策として活用することで、国際理解の促進や地域振興を推進することが重要かもしれません。

姉妹都市提携の観光振興への貢献度

・8%程:「大きく役立っている」

・60%近く:「あまり役立っていない」

 →55%程:「できれば役立てたい」

 →35%近く:「役立てたいとは思わない」

一方で、姉妹都市提携および姉妹都市交流を観光資源や観光施策として活用する動きは未だ発展途上です。国土交通省の実施した調査では、姉妹都市提携が観光振興に役立っているかについて、

「あまり役立っていない【58.2%】」>「大きく役立っている【7.7%】」

今後の姉妹都市提携を活用した観光施策については、

「できれば役立てたい【56.6%】>「役立てたいとは思わない【35.7%】」

という結果になりました。姉妹都市提携や姉妹都市交流を今後拡大し観光振興に役立てたいと思う自治体も多い一方で、事業としてどう取り組むか、成功するかなど見えないことから、役立てたいと思わない自治体も少なくありません。

姉妹都市提携を活用した観光アプローチ

・姉妹都市間の観光促進に向けたイベント

・草の根レベルの交流から発展させる地域全体での交流

・相手姉妹都市の観点に立った「特産品・イメージづくり」

・公益事業で終わらせない経済活性化へのマーケティング

・姉妹都市間の観光振興に向けたイベント

姉妹都市提携を活用したイベントを実施する上で考慮すべき点は、

①一過性の事業体制でないこと

②インバウンド観光客に焦点を当てること

国際映画祭やシティマラソン、MICEなどは一過性の事業となりやすく、あまり大きな収益が見込めないことが課題です。姉妹都市提携や姉妹都市交流を行う自治体においては、その相手海外国に対して、イベントの周知に付随する観光プロモーションや特産品の売買を促すECサイトの普及など、より多角的に拡大する必要があります。

▼関連記事:「祭り」とは?現代における「祭り」の意義▼

・草の根レベルの交流から発展させる地域全体での交流

姉妹都市交流は規模的にも小さいということが課題に挙げられます。姉妹都市提携を観光施策として行うには、社会・文化・経済など様々な分野において、地域全体で協力体制を築くこと、地道に姉妹都市の住民全体に対する周知を促すことも重要です。

・相手姉妹都市の観点に立った「特産品・イメージづくり」

インバウンド観光客の誘致や「姉妹都市」のイメージを国内外に醸成するには、その相手姉妹都市の社会性・文化・国民性などを考慮し、「相手の目線」に立ったマーケティング施策が重要です。なんとなく作った特産品やプロモーション施策でなく、しっかりとしたターゲットを選定し、相手に買ってもらえるような体制づくりも重要です。

・公益事業で終わらせない経済活性化へのマーケティング

自治体の経費や税金で実施されることの多い姉妹都市提携や姉妹都市交流ですが、地域住民や企業を巻き込んで「地域内で稼ぐ交流」を目標にする必要があります。「交流」=「公益性、公共性」と捉えられますが、「交流」をキッカケに観光業へ循環させることや企業間の提携など、地域への実質的影響についても考慮する必要があるかもしれません。

参考:姉妹都市交流の観光への活用に関する調査 国土交通省

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