「観光協会って何をする所?」
「観光協会と日本版DMOの違いって?」
日本の経済再興分野として注目される観光。
観光を担う機関として、「観光協会」と「日本版DMO」があります。今回は、その2つ「観光協会」と「日本版DMO」はどんな観光における役割を果たし、それらの違いは何なのか?解説します。
目次
観光協会|観光における役割
観光協会とは?
結論:第3セクターとして、公益的な観光事業を展開する役割を持つ団体。
「法人格を有する都道府県レベルの団体」と「市町村における任意団体」に分類される。
観光辞典によると、観光協会とは、
「国や地方自治体などの公的機関と、営利を目的とする民間企業との中間的な存在として、公益的な観光事業を推進する目的で設立される団体」
観光辞典
と定義されています。
つまり、都道府県や市町村の行政団体とは独立した公益機関(第3セクター)で、行政や自治体からの補助金、会員費用、事業収入などで運営する団体と言えます。
観光協会は主に、
◆全国を事業対象地とする「日本観光協会」
◆各都道府県と市町村を対象地とする「地方観光協会」
に分類されます。
各47都道府県における地方観光協会は、その全てが法人格を有している一方、市町村内においては任意団体が多く、意思決定や財源など地元行政に依存している観光協会も少なくありません。
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観光協会の役割とは?
「観光立国」の実現に向け、国や都道府県、市町村レベルでも観光事業の拡大を目指し取り組みが行われています。近年のこのような状況において、観光協会の果たす役割はどのようなものでしょうか??
役割①:地域内の観光資源の整備と活用
観光協会は主に、地域の観光資源を活用した観光コンテンツの開発やそれらを行う観光事業者を支援する助成金制度、地域内の優秀な事業を表彰する顕彰事業などを実施し、地域の観光地域づくりを推進する役割を担っています。
役割②:観光イベントやキャンペーン事業の推進
観光協会は、地域や全国で行われる観光イベントや物産展、シンポジウム、フォーラム等に参加し、地域の観光PRを行う役割を担っています。
役割③:地域内の情報提供
観光協会は、インターネットやイベントを通じた観光地域の情報発信をする役割も担っています。また、地方観光協会は地元の観光パンフレットを作成したり、観光案内所の充実化を促進することで一層の観光整備を行っています。
役割④:観光におけるシンクタンク的役割
全国や地元の観光資源の分析や整備、観光振興アドバイザーや人材育成事業などの観光地域活性化支援事業など、観光専門のシンクタンク的役割をも担っています。
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日本版DMO|観光における役割
・地域が主体となった観光法人
・地域全体の観光整備の役割を担う
DMOとは、「Destination Management/Marketing Organization」の略で、海外の観光先進国を中心に広まり、日本では2015年から「日本版DMO候補法人登録制度」が設置されました。
現在では、「広域連携DMO:10件」「地域連携DMO:83件」「地域DMO:81件」が登録され、一般社団法人や株式会社、一般財団法人など、法人格は様々です。
日本版DMOは、地域全体の多様な関係者を巻き込み、観光地域づくりを官民連携で総体的に実施する観光法人です。
「観光地経営」の視点から、観光マーケティング、ブランディング、商品開発、情報発信、観光客誘致などを、地域一丸(交通、飲食、宿泊、農水産、商工業、住民etc.)となって取り組むことがその役割です。
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「観光協会」と「日本版DMO」の違い
・行政区による制約を受けない点
・行政の補助金に必ずしも依存しない点
・競争力のある観光マーケティングという視点
「観光協会」と「日本版DMO」の違いについて解説します。
どちらも公益的な団体という印象がある一方で、実際には重要な違いがあります。
行政区による制約を受けないという違い
「観光協会」は、都道府県や市町村レベルでの観光活動を推進する機関と解説しました。
確かに、他の都道府県や市町村合同の観光イベントなどは行われる一方で、意思決定主体や財源などは地元自治体に依存しており、自由に観光プロモーションや観光整備を実施することが難しい現状がありました。
その一方で、「日本版DMO」は広域連携や地域間連携でのDMO団体、地域と地域が連携して行う拡大的な観光コンテンツ整備やプロモーションを行うことが出来るという違いがあります。
行政の補助金に依存せず、成果と利益を上げるという違い
「観光協会」は主に、団体会員費や行政からの補助金で事業を行います。その為、公益で自らお金を創り出し、事業サイクルを回すような事業計画はありませんでした。また、公共性の高さから、意思決定の遅さも問題とされていました。
一方「日本版DMO」の違いは、必ずしも行政の財源に依存せず、地域が主体となってお金と雇用を創り出す事業を目指している所です。JTB総合研究所の調査によると、行政の補助だけに頼らないDMOと自らの事業利益で運営するDMOは、合わせて全体の70%に及ぶとされています。
競争力のある観光マーケティングという違い
「観光協会」は、行政とは独立し民間とも異なる立ち位置である一方で、行政の補助金に頼ることで、事業の幅が拡大せず、観光客の誘致やプロモーション、稼ぎ続ける観光地域づくりを実現することが困難でした。
「日本版DMO」は、地域が主体となり、補助金に頼らない事業計画による「稼ぎ続ける観光地域づくり」が目的とされる点に違いが見られます。また、行政の意思決定の複雑さを解消し、地域の事業者が一丸となって観光マーケティング及び観光地域づくりを行うことが特徴です。
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