「プロプア―ツーリズムとは?」
「プロプア―ツーリズムの定義やポイントは?」
「プロプア―ツーリズムの実践的な取り組みや事例は?」
誰一人取り残さない社会を創ることを目標に、MDGsやSDGsなど世界各国で諸課題を改善する取り組みが行われています。
今回は、人々の貧困克服を、「観光」を通じて目指す「プロプア―ツーリズム(Pro-Poor Tourism)」について解説します。
目次
プロプア―ツーリズムとは?
「プロプアーツーリズム」という言葉を聞いたことがありますか?
定義や意味付けが確立されていないキーワードではありますが、
「プロプアーツーリズム」とは
貧困層および貧困地域の人々にとって、より良い経済的・社会的・政治的な寄与を促す全ての観光活動
と捉えることが可能です。
UNDP(国連開発計画)によると、
と定義しています。
世界人口の78億人のうち、
「12億人以上が1日わずか1ドルで生活し、20億人以上が1日2ドル未満で生活を強いられている」
とされています。
このような状況下で、徐々に発展途上国や貧困地域で期待度が上がっている分野が「観光」です。
コロナ以前は、国際観光は急激なトレンドで大きな経済的効果をもたらすということで先進国だけでなく、発展途上国でも「観光」を通じた経済活性化策が講じられていました。
国際観光は、2010年には世界GDPの12.5%に達し、特に発展途上国や新興国ではGDPに占める観光産業の割合や成長率が高いことが特徴で、プロプア―ツーリズムはまさに経済的・社会的・政治的な恩恵をもたらす観光として考えられています。
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プロプア―ツーリズムが果たす効果とは?
観光を通じた貧困層の経済的利益
プロプア―ツーリズムは、貧困層の経済的・政治的・社会的な利益増大を目的とした観光活動です。
観光とは、その携わる範囲の広さから多種多様な雇用を生み出すことが期待され、さらには観光による外貨増大により経済活性化が促進されることもあります。
また、国家経済の多くを観光業・旅行業に頼る国も多く、ほとんどが発展途上国や新興国となっています。
そのような国々が観光に携わる人々を経済的にしっかり保護することは、プロプア―ツーリズムの担う責任や良い効果とも言えるでしょう。
地域生活に不可欠なインフラの整備
国や地域の観光を促進することは、直接的・間接的に地域住民の生活に利益をもたらします。
- 観光周遊性およびコミュニケーションの向上における社会的インフラ整備
- 自然資源を通じた観光による環境保全と活用
- 観光を通じた文化の復興と発展など
様々な地域生活に重要な要素において利益があります。
プロプア―ツーリズムは、貧困層に対する利益のある観光活動ですが、それは長い目でみると地域住民全てに恩恵をもたらす概念とも言えるでしょう。
プロプア―ツーリズムのポイントは?
・観光に携わる「人」を守る観光地域づくりを!
プロプア―ツーリズムは、貧困層の経済的・政治的・社会的な利益増大を目的と掲げる一方で、どこをゴールに置くか、何に対し重点的に取り組むか難しい面があります。
プロプア―ツーリズムの概念上、経済的な利益を追求し、ひいてはそれが地域社会の発展に繋がるという発想をすると思います。
しかし、より長い目で見た場合、「観光に携わる地域住民や地域を守る」というプロプア―ツーリズムが重要となります。
それは、地域住民の経済な利益も重要な一方で、地域生活上の自立性や地位の獲得、女性の社会進出、または地域や自然環境の恒久的な発展を目標に取り組むことでもあります。
サステナブルツーリズムに通ずる概念でもあり、発展途上国や新興国に限らず、観光立国を目指す国や地域は、経済的な利益だけでなく、その周辺環境や観光に関わる全ての人に対する恒常的な利益を考慮することで、地域住民の観光への理解を促進し、より良い発展へ邁進することが出来るでしょう。
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プロプア―ツーリズムの実践的な事例
アフリカで体験する中長期ボランティア|地域に触れるプロプア―ツーリズム
アフリカ地域では、貧困や難民、経済・生活上の問題に対し取り組むようなODAやボランティア活動などが活発に行われています。
観光分野においても、
- 「アフリカの観光を発展させる経済・社会的な活動」
- 「難民キャンプを訪問する学習観光」
- 「少数民族との触れ合い体験ツアー」
- 「アフリカでの教育ボランティアツアー」
などが行われています。
実際の現場での学習やボランティアなどを通じた観光活動は、その地域に恩恵をもたらすプロプア―ツーリズムになるだけでなく、地域に関わる人と人を繋ぐ契機にもなります。
スラム街でのプロプア―ツーリズムで考える貧困問題
アフリカや東南アジアなどの新興国を始め、先進国でもスラム街はあります。
スラム街の人々がどのように生活し、何も知らずただ1日1日を精一杯生きなければならない現実があるということは、ほとんど知られない事実です。
このような中、スラム街の人々や学校・店、現地で活動する人々との交流を通じ貧困や格差問題を考えるプロプア―ツーリズムが注目されています。
貧困問題自体を観光コンテンツとして発信することに嫌悪感を抱くという意見もある一方で、観光とは地域の諸問題を含む総合的な分野でもあるため、地域課題を解決しながら、人々に求められる住みやすい・訪れやすい観光地域づくりを目指すことが重要です。
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