「シビックプライドとは?」
「地域コミュニティにおけるシビックプライドとは?」
「観光におけるシビックプライドが果たす役割とは?」
今回は、地域コミュニティにおけるシビックプライドについて解説します。また、観光地域づくりにおけるシビックプライドが果たす役割やシビックプライドを通じた観光施策の事例について紹介します。
目次
「シビックプライド」とは?
地域ブランディングや6次産業化による地域活性化、着地型観光の推進など、地域内における観光施策およびコミュニティ活性化の取り組みが拡大しています。
このような、地域内における活動で注目されている言葉「シビックプライド(Civic Pride)」があります。
「シビックプライド(Civic Pride)」とは、
地域内の住民が抱く、自分たちの町や都市に対する愛着や誇りを意味し、住民それぞれが当事者意識を持ち、地域の更なる活性化に寄与することを促すもの
「シビックプライド」は、もともと英国ヴィクトリア王朝時代に、都市計画や建造物、公共施設の文化や審美性を表す概念として捉えられていました。現在のコミュニティ研究において、「シビックプライド」は、文化的アイデンティティや市民権、コミュニティにおける共有されたイメージ等と連想され、住民の地域参画、愛郷心、地域愛着と捉えられています。
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「シビックプライド」による地域活性化およびコミュニティ振興
地域住民の故郷や地域に対する愛着や誇りである「シビックプライド」が、都市再生やコミュニティ活性化に寄与することが期待されます。
地域社会において周囲との関係性が希薄になり、また若者が域外へ流出することで地域が衰退するなど、地域内における団結心や郷土愛などが薄れる社会背景において、「シビックプライド」の醸成を通じ、地域住民が参画したボランティアプロジェクトや公共/民間事業の創造、住民同士の活発なコミュニケーションや頼れる社会創りなど、地域住民が主体的に取り組み、新たな地域を創る都市再生が可能になるでしょう。
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観光地域づくりにおける「シビックプライド」で大事なこと
・地域への愛着=観光客に対する「おもてなし」精神
地域への愛着「シビックプライド」を醸成する上で重要なことは、観光事業者だけに留まらない地域全体への「シビックプライド」の理解促進です。
ニューツーリズムや着地型観光、物見遊山から「コト消費」など観光の形が変わる中で、観光事業者だけでなく、地域住民が観光客に関与する機会も増えました。また、地域の人々と交流することや地域独自の生活文化を体験するなどのニーズも増えたことから、地域住民自身にも「シビックプライド」のような郷土愛を醸成し、地域全体で観光客誘致に取り組む必要があります。
・地域内における住民同士の活発なコミュニケーション
Q.「あなたの家の隣に住んでいる人のことを知っていますか?」
「頻繁に会う・話をする」:4.8% 「時々会う・話をする」:10.0%
「会うと挨拶をする程度」:47.7% 「顔は知っているが、話したことはない」:9.8%
「知らない」:27.8%
⇒4人に1人は、隣の人の顔を知らない(地域による場合もある)
「シビックプライド」の醸成を通じた観光地域づくりにおいて、地域内における住民同士のコミュニケーションの活性化が大事です。周囲との関係性が希薄になっている社会において、住民同士のコミュニケーションやコミュニティ活性化、祭りの実施など、人々が常に関わる、地域内での団結ある社会創りが大事です。
・「シビックプライド」による地域独自の観点
「シビックプライド」を通じた観光地域づくりにおいて、地域内にすでにある地域資源や活用・発見されていないものをブラッシュアップし、地域独自且つ地域内の資源を活用した施策が重要です。観光地域づくりにおいて、域外企業への利益や無駄な税金投資の事業が蔓延するなどの課題がある中で、空き家や今ある伝統資源や文化などを、「市場」の視点に立ち開発していくことで、地域内での循環した経済活性化及び「シビックプライド」の醸成を促進することが出来ます。
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・「シビックプライド」を絶やさない「地域教育」
「シビックプライド」の醸成において、地域内における地域住民への地域に対する「地域教育」が重要です。地域の過疎化に伴う教育機会の減少に対し、若者世代への「地域教育」による地域活性化策の議論や「シビックプライド」を醸成する自治体・企業などが連携したプログラムなどを実施することで、若者や域外からの人々にとって魅力ある地域づくりを実現できます。
シビックプライドを通じた地域活性化および観光事例
「I amsterdam」|アムステルダムの「シビックプライド」醸成プロジェクト事例
長年「シビックプライド」の醸成に取り組むオランダの「アムステルダム・パートナーズ」は、年々下降する「住みたい都市ランキング」「魅力的な都市ランキング」の課題に対し、長期的な地域コミュニケーションマーケティングに取り組む「シビックプライド」事例の一つです。
市全体として「I amsterdam」のロゴマークを拡散し、国内外の会議や世界大会での活用、市民が使えるフリー素材として共有し、またアムステルダムの生活を写す写真集やイベントを実施することで、地域全体でのアムステルダムに対する「シビックプライド」の醸成に成功しました。
参考:I amsterdam
新潟市上古町商店街|廃れた地域資源を活用した「シビックプライド」醸成事例
建物が古くシャッター街であった上古町商店街の再興も、「シビックプライド」を通じた観光事例の一つです。
商店街を気に入る若者たち「ヒッコリースリートラベラーズ」が中心となり、商店街の活性化やロゴ作成、商店街独自の商品開発を実施することで、徐々に他の商店も関わり商品開発を行うなど、商店街が一丸となったプロジェクトとして発展しました。若者の動きで、地域住民に「シビックプライド」が醸成され、さらに「シビックプライド」が伝播するなどの良い影響が起こりました。
「八幡平ボランティアガイド」|若者世代が担う観光教育と「シビックプライド」醸成事例
少子高齢、過疎化、人口減少が著しい秋田県鹿角市の鹿角市立八幡平中学校では、地域観光やふるさとへの理解促進、地域教育による社会課題の解決能力などの形成を目的に、「八幡平ボランティアガイド」を実施しています。
自然資源溢れる国立公園「八幡平」を通じたフィールドワーク、観光客に対するガイド、観光事業者や地域住民、自治体等との連携と社会課題の克服など、若い時から地域への「シビックプライド」醸成を通じ、持続可能な観光地域づくりと団結ある地域社会の形成を実現することが出来ます。