「名前の意味は分かるが、フードツーリズムとは?」
「フードツーリズムを活用した観光地域活性化のポイントは?」
「フードツーリズム施策の課題点は?」
今回は、ニューツーリズム分野としても注目される「フードツーリズム」について解説します。フードツーリズムを推進するにあたり重要となる「食の多様性」やフードツーリズムの課題点などについて紹介します。
目次
フードツーリズムとは?
「和食ブーム」「B級グルメ」「地域素材を使った料理」「ベジタリアニズム」など
「食」に関するトレンドには枚挙に暇がありません。ツーリズムにも例外なく!
フードツーリズムとは
上記のような「食」に関わる観光を目的とするもので、地域に根差す食文化を体験するニューツーリズム
を意味しています。
日本の観光・旅行において、「食」は2次的要素として捉えられる背景がありました。
一方で、訪日外国人客の増加や着地型観光の拡大により、地域が地域の魅力を最大限に活用し観光客を呼び込むことが重要性を増すようになりました。
このような観光動態のなかで、「食」を目的とする観光客の増加および地域のお金を循環する地域食材を活用した観光特産品の開発推進など、フードツーリズムに関連する活動も増えていることが窺えます。
フードツーリズムの市場規模
・115兆9592憶円(2019)→186兆5503億円(2027)に拡大
・年平均成長率:16.8%
米国の企業Research and Marketsが発表する「Global Culinary Tourism Market(2020-2027)」において、キュリナリーツーリズム(*後述:フードツーリズムとほぼ同意)の市場規模は、
2020~2027年にかけて16.8%拡大成長し、2027年には約186兆5503億円に達すると予測されています。
訪日外国人のフードツーリズム消費動向
Q.訪日前に最も期待していたこと(単一回答)
「日本食を食べること」:27.6%
「自然・景勝地観光」:14.2%
「ショッピング」:11.3%
2019年の調査によると、訪日外国人の内27.6%が「日本食を最も楽しみ」にしているという結果になりました。
また、「訪日前に期待していたこと(複数回答)」でも76.2%と最も比率を占めるなど、フードツーリズムの関心度は高いことが分かります。
フードツーリズム施策で重要な「食の多様性」とは?
・フードツーリズム(Food Tourism)
・ガストロノミーツーリズム(Gastronomy Tourism)
・キュリナリーツーリズム(Culinary Tourism)
フードツーリズムを厳密に定義づける際、そしてフードツーリズム施策を行う上で、「食の多様性」を考慮することが重要です。
フードツーリズムには、主に3つの分類があります。
(1):フードツーリズム
フードツーリズムは、最も汎用性の高い「食×観光」の用語で、いわゆる食べ歩き∼グルメ(美食)旅行など食に関わる観光を意味する言葉です。
*後述する様々なフードツーリズムの形態や派生した種類が数多くあります。
(2):ガストロノミーツーリズム
フードツーリズムの範疇に位置するが、より深い意味での「食×観光」を表すガストロノミーツーリズム。
ガストロノミーは、「美食学・美味学」を意味し、ガストロノミーツーリズムは「美食」に関わる観光、学術的な文脈上の「美食遺産」「美食研究」などで用いられることがあります。
(3):キュリナリーツーリズム
「調理、料理の」という意味合いを持つキュリナリ―の観光。フードツーリズムやガストロノミーツーリズムとほぼ同意、同じ文脈で使われるが、実際に調理する料理人やレストラン側に立った「食×観光」の形態を特に言います。
例えば、地域食材だけを使った料理の提供、料理体験などはキュリナリーツーリズムに含まれます。
他にもフードツーリズムの種類を区別し比較した論文もあります。安田亘宏は、下記6つの日本のフードツーリズムを分類しています。
高級グルメツーリズム | 地域に伝わる郷土料理や懐石料理などの高級伝統料理を食し、地域に伝わる美食を嗜む観光 |
庶民グルメツーリズム | 地域生活の中で育まれた郷土料理やB級グルメを目的とする観光 |
マルチグルメツーリズム | 魅力溢れる安価で親しみやすい地域料理から高級料理など幅広い「食の多様性」を有する地域で楽しむ観光 |
食購買ツーリズム | 地域で生産される食材や加工食品、市場や道の駅などで飲食関連の商品を購入する観光 |
食体験ツーリズム | 味覚狩りや郷土料理体験、農業・漁業の体験など、地域の食に関わる一連の活動を体験する観光 |
ワイン/酒ツーリズム | 日本酒やワインの生産者、ソムリエなどとの交流や酒蔵巡り、テイスティングを通じた観光 |
フードツーリズムの課題点
・メニューの多言語化と成分表の記載
・ハラールやベジタリアンなどへの対応
・「日本=世界に誇る日本食」というイメージ・情報の発信
・「フードツーリズム」とSDGsの施策
メニューの多言語化と成分表の記載
訪日外国人の観光誘致には、常に付きまとう多言語化。フードツーリズムにおいても例外ではありません。
多言語化の整備を行う際の注意点はあるもの、「その言語が母国語である外国人による翻訳」と「ICT化およびデジタルトランスフォーメーション」が特に重要です。
また、日本のメニューや商品の成分表示が分かりづらいことも課題として挙げられます。外国人にも分かるような世界共通の成分表示を行うことも必要です。
▼関連記事:観光施策におけるICT化とは?【事例あり】▼
ハラールやベジタリアンなどへの対応
訪日外国人には、ムスリムやヒンドゥー、ベジタリアンなど特定の食材を食べることが出来ない観光客も多数います。
フードツーリズムの拡大にあたっては、オーダーメイド可能なメニューの開発やムスリム向け・ベジタリアン向けなどのメニューをある程度作ることが、「食の多様性」や観光客の振るいこぼしを防ぐことが出来ます。
▼関連記事:ベジタリアン・ヴィ―ガン・ゆるベジに対応した観光施策とは?▼
「日本=世界に誇る日本食」というイメージ・情報の発信
フードツーリズムを推進する上で、訪日外国人や海外への観光プロモーションも重要です。
日本食は、海外の人々の中で人気を集めている一方、実際に日本で食す料理と海外のとでは全く異なります。今後は「日本で食べる日本料理」の価値を上手く伝えることが重要です。
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「フードツーリズム」とSDGsの施策
フードツーリズムを行う上で、SDGs(持続可能な開発目標)を考慮することが重要です。
最近では、廃棄食品の削減や今まで注目されていなかった昆虫や野菜などを用いた料理など、持続可能な飲食活動が活発に取り組まれています。
今後は、どの程度環境保護に貢献しているのかなど、社会へ果たす役割も重要になるでしょう。