こんにちは!
今回は、地域や土地全体を美術館として観光地化し、地域の交流人口を増やす「地域まるごと美術館」施策について事例と共に解説致します。
目次
地域全体を美術館に!?
日本の地域観光の現状
従来の日本では、「自然観光資源」と「歴史文化観光資源」を主な観光資源として活用しており、特に日本の地域においては、「伝統的歴史観光」に力を入れてきました。
「日本の優れた歴史や文化を発信したい」という想いと裏腹に、
今日の観光業においては、個人の多種多様な観光ニーズや地域資源を一層生かした着地型観光の推進により、より多く多様な観光スタイルを提示する必要があります。
例えば、一般社団法人日本観光文化協会の示す観光資源体系では、
「自然・景観観光」「生活文化観光」「伝統的歴史観光」「スポーツ観光」「芸術観光」
と示されています。
このように、現在の体験型観光の普及や個人ニーズの顕在化により、地域はより多くの観光資源や観光スタイルの提供が急務となっています。
参考:『基礎から学ぶ観光プランニング』
「地域まるごと美術館」とは?
上記の観光資源体系にある「芸術観光」において、
「地域まるごと美術館」は、住民や事業者、自治体など地域全体が一体となって地域をまるごと美術館として、地域への観光客流入を目指す施策と捉えることが出来ます。
一般に芸術鑑賞や美術館は、絵画や彫刻など美術作品に興味がないと敷居が高い、行っても作品を理解出来ないなど否定的な声を聞きます。
このような現状に対し、地域の至る所に美術作品を展示したり、国際芸術イベントやフェスを誘致することで、地域住民や観光客が美術及び地域資源に理解を深め、経済や社会影響両面で成功している地域自治体もあります。
問題点も…
地域にただ美術作品を置いたり、芸術イベントを誘致するだけでは、観光客は増えないばかりか、一般的にボランティア精神の強いこれらの事業では経済も活性化が期待できません。
「どうして当地域に美術作品を置くのか」「それは、地域に関係していることなのか」「今ある芸術/美術資源を活用できないか」「美術作品やイベントを提供するなら、どんなもので地域に関係があり、観光客に訪れるメリットがあるのか」など、常に「地域資源」と「観光客(市場)」に注目し、お金を落とす及び経済が成長できる仕組みを作る必要があります。
「地域まるごと美術館」の事例紹介
「六甲ミーツ・アート 芸術散歩」∼自然の中で楽しむ現代美術∼
兵庫県神戸市の六甲山で、2020年9月12日∼11月23日まで第11回目となる「六甲ミーツ・アート・芸術散歩2020」が現在開催されています。
自然や美しい景観、歴史溢れる六甲山に点在する美術作品を鑑賞する他、兵庫県の有馬温泉及びJR新神戸駅にも美術作品が展示されており、地域全体が美術館となった「地域まるごと美術館」です。
「ART SETOUCHI」∼美術を通じた地域活性∼
「ART SETOUCHI」は、3年ごとに開催される「瀬戸内国際芸術祭」と春・夏・秋に行われる美術作品の展示やアーティストによるワークショップなどを通じ地域の活力を再生させる取り組みと位置付けられています。
実際、「ART SETOUCHI」の経済効果は数字に表れており、2019年の「瀬戸内国際芸術祭」に伴う経済波及効果は180億円にのぼるとされています。
地域に眠る伝統文化や地域資源を生かした美術作品の展示により、美術だけでなく地域の生活文化や歴史にも関心が向くことが期待できます。このように、美術だけでなく地域に関連させた美術作品やイベントを誘致することで「地域まるごと美術館」を成功に導けます。
参考:ART SETOUCHI
「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」
新潟県越後妻有地域、過疎化や高齢化が進む地域約200の集落において、自然と共に歩んできた人々の生活文化や豊富な自然などを、美術作品を通じ楽しむことが出来ます。また、地域に点在する空き家や廃校舎などを美術拠点として作品とするなど、地域の社会課題を解決する取り組みも行われています。
3年に1度は国際芸術祭「大地の芸術祭」が開催され、世界最大級の国際芸術祭となっています。海外からのアーティストや観光客が増加することで、地域の活性化につながるなど、地域と世界を結び、美術を通じた世界交流を実現しています。
まとめ:「地域まるごと美術館」美術作品を通じた地域活性化に向けて
今回は、地域住民や事業者、自治体が一体となって地域全体を美術館とする「地域まるごと美術館」について解説しました。
昨今の多様な観光ニーズに対し、芸術や美術、自然と生活文化など、様々な要素を関係させ地域の魅力を醸成していくことが重要です。その一つの方法として、地域の文化財だけでなく廃校舎や公共施設なども美術作品として地域の観光資源とする等あります。
ぜひ、誰もが訪れたくなるような地域づくり、「地域まるごと美術館」づくりを実現し、社会及び経済の課題解決につなげてほしいです。